Software Transactional Memo

STM関係のことをメモっていこうと思います。

Googleに転職していきなり3ヶ月の育休を貰った

TL;DR アフィ記事です

転職してからすっかりSNSで音沙汰がなくなったなkumagiと一部の界隈で噂されているようですが、twitterFacebookにはたまに書いていたように娘が産まれました。

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Googleでは子供が生まれた時に育休を取ることができる。
単なる育児休業は育児・介護休業法に定められた労働者の権利であるけれど、Googleではそれに加えて3ヶ月間フルに給料が支払われる有給休暇が付与される*1。これに加えて雇用保険から給付金をもらう育休を取っても良いとされているが、ソフトウェアエンジニア的な意味で遅れを取り過ぎるのも憚られたのでまずは3ヶ月の有給休暇をありがたく頂戴することにした。

授乳について

3ヶ月までの赤ちゃんは昼夜問わず3時間おきに母乳やミルクを欲しがる。大抵の成人は3時間おきに母乳やミルクを与え続けると精神的にだいぶ参ってくるという知見が広く共有されていたので、もともと夜型人間である僕が深夜0時から早朝6時に掛けての間ずっと夜ふかししながらミルクとおむつ換えを担当する2交代制シフトを採用した。そして6時から12〜13時に掛けて起きてきた妻にバトンタッチして寝るという生活を続けている。

これは非常に効果的で、睡眠不足に起因する問題は夫婦ともに発生していない。部屋の明かりを消して暗い部屋で黙々とPCを叩くのは学生の頃からの日常だった上、娘はほとんど寝ているので授乳を除いて割り込み抜きでコードを書いたり記事を読んだりできる。夜ふかしが苦手でなければ万人にオススメしたいソリューションである。

特に調乳の際に大活躍しているのが山善電気ケトル

これは60度以上を10度刻みで温度設定してキープできる優れ物である。雑に水を入れて一旦沸騰させて塩素を飛ばし、70度に設定してお湯を作る。粉ミルクを溶かす際に70度以上のお湯を用いるのはサカザキ菌を不活性化するため、でも70度のミルクはそのままでは飲めないので冷ます必要がある。流水の下でくるくる回して冷ましていた時期もあったけど冷ます水も浄水してあれば良いかと冷蔵庫で冷やした浄水ポットの水で割っている。

100mlのミルクを作るなら粉ミルクの上に80mlのラインまでお湯を注いで振って溶かすと粉ミルク内の空気などが抜けて水位が70mlまで下がるので30mlの冷水をポットから注いでやるとちょうど飲みごろの温度になる。

赤ちゃんが夜間にミルクを欲しがるのは時として非常に唐突でものすごい号泣で急かされるため、ミルクを素早く用意する必要に駆られることもあるがこの方法に落ち着いてからは素早くニーズに答えられている。

ミルクの銘柄は、はぐくみ・アイクレオ・ほほえみ・はいはいを試したがどれも好き嫌いなく(と言っても口は聞けないので本当のところはわからないが)すんなりと飲んでいる。強いて言うと300g缶よりも700g缶の方が蓋の裏側にスプーンを擦り切る機構が(少なくともはいはい・ほほえみは)付いているので粉ミルクをかなり厳密に擦り切りで測りとる事ができてオススメである。

哺乳瓶はピジョンのスリムタイプの物を3本用意した。

哺乳瓶の材質はガラスとプラがあるが、ガラスは流水で冷ましやすく傷が付きにくいから衛生的で長持ちであるという利点がある一方で、重い・割れるといった欠点もあり一長一短であるが我が家では前述の方法でミルクを冷ましているので流水で冷ます必要は無く、結果としてプラスチックに軍配が上がった。ガラスの哺乳瓶も時々使ってはいて住み分けの問題ではある。

そして哺乳瓶の殺菌にはCombiの除菌じょ〜ずを使っている

中に除菌したい物と少量の水を入れて電子レンジで5分回すと内部で高温の蒸気で菌を蒸し殺すという代物である。他の除菌手段と比べての優劣はわからないがこれ自体がひとつの哺乳瓶の保管場所として活用でき、使った哺乳瓶と使っていない哺乳瓶が見分けやすく、除菌のサイクルを作りやすくて大変良かった。ただ、除菌済みのまま一日放置したらさすがに衛生的とは言えない気がするので適宜気をつけ、使う直前に洗いなおすなどした方が良いかも知れない。世の中には一切の除菌なしで洗うだけで回せている家庭もあるし、こういうのをどこまで気にしたいかは途中から自己満足の域でもある。

哺乳瓶を洗うブラシも色んなものが売られているが、スリムタイプの哺乳瓶を普通の哺乳瓶洗いで洗うとスポンジがいつしか破れるので予め細身の物を選んだほうが良いという知見も記しておく。

おむつについて

おむつはメリーズ・ムーニー・パンパース・グーンを試した。どれも甲乙付けがたく、特にトラブルもなく立派に機能を果たしていたが、強いて言えばパンパースの高い方

が一番肌触りがよく、おしっこによって色が変わる機構(これ自体は全種付いてる)が暗い部屋でも特に見やすかった。 この辺は環境にもよるので複数試して使うのが一番いいと思う。でも子供が生まれた家庭に考えなしにおむつをwishlistからバンバン送るとサイズの問題で付けれなくなって余らせてしまう可能性もあるのでタイミングを見計らったほうが良い(ちなみに僕の家では頂いた分は使いきりついでに近所の薬局で3パック追加で程買った所で新生児用を卒業した)。

サイズの心配なく送って役立つのがおしり拭きである。これも各社の物を頂いたので試したが

に軍配が上がった。綺麗に一枚ずつ取り出しやすい上に厚手で破れない安心感がありながらも繰り返すうんちを念入りに拭いても肌を痛めない柔らかさがイチオシの理由である。おしり拭きはサイズアウトの心配がない上に、取り出す際の手さえ清潔に保てれば口でも服でも床でもカーペットでもおねしょシーツでも拭けて本当に万能なので、もし身近でお子さんが生まれる家庭があったら何はともあれおしり拭きを贈ってあげて欲しい、安いし。我が家ではうんちおむつの対処は僕が起きている時間帯では僕の担当なのでここの使いやすさは大事である。

おむつといえば中身が入った使用済みおむつをどう捨てるかは問題である。可燃ごみを毎日回収してくれるような地域に住んでいないので、何らかの方法で敷地内に使用済みおむつを可燃ごみの日まで保管する必要があるが、生半可な方法では中身が臭ってきて大問題となる。

 そこで良かったのがこれ。二重蓋となった構造の中に消臭機能のあるビニールの長い筒が入っており、その筒の両端を結ぶ事でおむつのゴミ袋として捨てる事ができる。我が家ではこの装置がキッチンに居座っているが一度も臭いが漏れる系の問題が起きたことはなく、平時であれば存在を忘れる程である。単におむつポッドというだけでは複数の品があるが何故これを勧めるかというと純正の専用消臭ビニールの筒が同じくAmazonで売られているので入手性が高く、消費してもお金で解決できる問題となるからである。

アプリについて

子育て家庭用のアプリはいろいろあるが、やはり「ぴよログ」にはよくお世話になっている。

どちらかが記録すれば自動的にお互いのスマホで同期されるため、最終授乳時刻がひと目でわかって便利である。医師や保健師に相談する際にも実際の数値をベースに相談ができるのでお互いやりやすい。

そして写真の共有は「みてね」を使っている。この時勢、スマホのカメラの性能が全く侮れないものになっているのでスマホで気軽に撮った写真をバシバシ貼り付けている。実家の祖父母も閲覧ユーザとして参加していて、それなりな頻度で写真を確認しているようなのでどうやら勝手に親孝行ができているようである。

mitene.us

みてねはアプリだが僕の祖母、つまり娘にとっての曾祖母は怖がってスマホタブレットに触ろうとしないので物理的な恩恵も必要であると考えノハナも使っている。

nohana.jp

毎月226円そこらで物理的な本を送付できる。使う写真そのものは毎月みてねから適当に見繕った物であるが、やはり本の方がウケが良い層というのは確実に存在する。

そして、予防接種が思っていたより多かったので管理しきれなくなる事を危惧しスケジューラアプリを入れた。

www.know-vpd.jp

これは革命的に使いやすいわけではなかったが、煩雑な情報を整理するには充分であった。
ワクチンは生後2ヶ月から打てるので2ヶ月目の誕生日に予約してワクチンをやっている小児科に連れ込んで一気にやってもらうのが良い。ワクチンをやっている小児科は市役所からもリストを貰えたりするが「その時に打てるワクチンを全部打つ」というのを効率よくやるためにはそのリスト内のどれでも良いわけではないので予め電話で予約時に確認しておくのがオススメである。

子守りについて

僕は男なので当然母乳は出せないし、子供がどうしても泣き止まない時のおっぱいパワーによる寝かし付けは便利と先輩家庭は口々に言うので結構なハンディキャップがあることは覚悟していた。

しかし、結論から言うと父親でも気合次第で存分に育児はできる、と思う。これはうちの娘が特に病気も無く、好き嫌いなくミルクも飲み、すくすく育っているというのに救われている側面も大いにあるが、基本的には泣いている娘への対処はプログラミングにおけるデバッグ作業に近い。

唐突に泣き出す→ぴよログから最後の授乳時刻を見て2時間以上経過している→授乳要求ならおしゃぶりを与えた時に吸いながら泣くはず→おしゃぶりを与えても吐き出す→おむつでした

という具合に、原因のある箇所を二分探索で探っていき原因を突き止めてやると7割ぐらいは大体うまく行く。残りの3割はもうどうしても泣き止まなくて諦めるしかないパターンや、抱き上げてしばらく遊んでやると満足するパターンなどがある。

どうやら新生児は「自分が泣くのはお腹空いているからで、ミルクを飲めばそれが解決する」という思考回路を持ちあわせておらず「空腹や喉の乾きの不快感」と「口元にミルクが来ると条件反射で吸う」が独立した回路で動いており、それがたまたま噛み合って「ミルクを吸う事で空腹が解消する」のだがそこに因果関係を見つける程賢いわけではなさそうである。なので口元にミルクが来ても飲まずなお空腹で泣き散らしたり、眠さの不快感で暴れて逆に眠れなくなったりといった愚行を平気で行う。これは言って聞かせても通用するはずもなく、根気よくなだめ続けるしかない。乳房があればもう少しスムーズに行ったかも知れないが父親では結局抱き寄せて落ち着かせるしか方法はない。10分でも20分でも付き合うつもりで抱っこし続ければそのうち落ち着く。

強いて言うなら家の周り徒歩20m圏内ぐらいに抱っこのまま散歩に行くと好奇心が勝つのか抱っこ移動に対する条件反射か大抵は泣き止むし、最近twitterで見た「赤ちゃんの両腕を胸の前で組ませて下から顎ごと保持し、もう片方の手でお尻を掴んで斜め45度下を向かせながら空中をゆらゆらさせる」というテクニックはかなり泣き止ませる力が強い、というかこの姿勢になると泣き喚きにくくなるだけなのでは…。そして腕力への負担が大きい。

なお「耳元で蕎麦をすするような音を立てる」「ビニール袋を耳元でクシュクシュする」「ホワイトノイズを聞かせる」などの音系は一切通用しなかった、個人差もあるのだろうけど。

そして先ほど、ミルクを根気よく与えようとしても拒否され、おむつは完全にクリーンで、あの手この手を試し尽くしたのにこの世の終わりのようにギャン泣きする愛娘を前に完全にお手上げとなったのでうつ伏せに寝かせた。当然寝返りは打てないし、娘はうつ伏せで寝る習慣がないので寝苦しくて更にギャン泣きするのであるが少なくとも先ほど与えたミルクをゲップで吐き出して喉に詰まらせる心配だけはないので、うつ伏せによる窒息だけは注意深く回避させながらゲップの放出を確認して再び仰向けに戻し、ひたすら宥めすかした。僕にとっての育児とはデバッグであり効率ゲーである。なお通常状態の娘はとびきり可愛い(親バカ)。

Googleについて

都合、最初の1ヶ月しか働かずに3ヶ月もの休暇を貰っており、ずっと家で娘の世話をしているだけで前職の倍ほどの額面が銀行口座に振り込まれ続ける様子を見ながら、さすがに福利厚生行き過ぎじゃないか?と正直少し怖くなったが、しばらく社内の情報と触れ合った所「世界トップクラスの人材を繋ぎ止めておくにはこれぐらいの福利厚生を社員一律に提供するぐらいじゃないと戦えない」といえるほどトップ人材の獲得競争が熾烈になった果ての姿だろうと納得するに至った。

僕自身がこれに見合う世界トップクラス人材であるかはさておきとして、これほど至り尽くせりな環境を用意しないと引き抜かれてしまう程に魅力的な人物が数多く在籍している事は入社して1ヶ月間社内のあちこちを見回って確信できた、これはこれでそういう(雑に言えばGAFA内の)人材獲得競争なのだ*2。何ならこうやって過ごしやすい空気を作っている文化自体が、ただの「今以上に分厚いだけの札束で殴って引き抜く」という引き抜きに対するコスパの良い防御であるケースもあるのだろう。

NTTにいた頃には「あんまり福利厚生を手厚くすると調子に乗る」「権利を主張する前に義務を果たせ」といった呪詛を繰り返し耳にしていたので、Googleがそれとは全く別次元の戦いをしているという事に気づくのに時間が掛かった。これを安易に日米の差とまで一般化して語る事はできないが、ソフトウェアの世界は個人の力量差が如実に会社としての力に直結するので、人材に対する扱いも自ずと根本的に変わってくる事を思い知らされた。

*1:厳密には翌年に繰越などができないので有給そのものではないかも

*2:当然この争いにはNetflixやMSといった巨大企業やユニコーン企業も参戦している